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●乳がん

WT1がんワクチン臨床研究を全国展開 2006/05/03
 大阪大グループが進めるWT1がんワクチンの臨床研究が、年内にも全国20医療機関に広がる見通しとなった。肺がんや脳腫瘍などを対象にした安全性試験で、現在まで目立った副作用がなく、がん縮小などの効果が見られており、研究で効果が確認されれば、実用化に向け大きく前進する。WT1は、細胞増殖にかかわり、様々な種類のがん細胞に多く現れるたんぱく質である。研究グループはWT1の特定の断片が、免疫反応の目印になることを発見し、がん細胞にWT1が見つかった患者であれば、人工的に合成したこのペプチドを注射することで、患者の免疫系にがん細胞を攻撃させることができると考えた。大阪大学病院で2001〜2004年に、20人(白血病10人、乳がん2人、肺がん8人)に実施したところ、3人でがん組織が小さくなったり、進行が止まったりしたほか、9人でがん細胞の指標とされる腫瘍マーカーの値が下がった。2004年に始めた脳腫瘍でもがん組織が小さくなったり、進行が止まったりする例が確認された。白血病の一部で白血球や血小板が減る症状が認められたが、それ以外にいまのところ目立った副作用は確認されていない。
 臨床研究には東北から九州までの20医療機関が参加予定で、大阪大学病院、大阪府立母子保健総合医療センター、広島赤十字原爆病院、愛媛大学病院、高知大学病院ではすでに臨床研究が始まっている。

乳頭から抗がん剤を注入する新治療法開発 2006/04/15
 早期の乳がんの治療法として、乳頭から抗がん剤を注入する方法を滋賀医科大と米ジョンズ・ホプキンス大の研究グループが開発した。副作用が少なく、効果も高いことが動物実験で確認できたという。
 一般的な乳がん治療は、患部の切除手術、放射線治療の後、抗がん剤の全身投与を行う。乳房温存療法でも最小限度の切除は行われる。乳がんのほとんどは、乳頭から枝状に広がる乳管内で発生し、次第に外側に浸潤していくため、がんが乳管内にとどまっている間に、局所的に抗がん剤を入れて治療できれば、切除手術を避けられる。
 研究グループは、乳頭から抗がん剤を入れた場合に乳管網の隅々まで抗がん剤は広がるが、全身を巡る血液にはほとんど移行せず、副作用を減らせることができ、乳がんのネズミで実験したところ、同量の抗がん剤を全身投与した場合よりも治療効果が高かった。

がんの放射線治療 副作用リスク遺伝子で予測 2006/03/28
 放射線によるがん治療で副作用が起きるかどうか、患者の遺伝子を基に判断するシステムを放射線医学総合研究所(千葉市)が開発した。個人によって異なる副作用の発症確率を予測し、その人に合った放射線照射量を決めるのが狙い。予測精度を高め、5年後の臨床応用を目指す。
 がん細胞を狙う放射線治療では、周囲の正常細胞も傷つき、潰瘍(かいよう)や下痢、血尿などの副作用が伴うことがある。
 同研究所は、全国の大学病院などの協力で約2000人の副作用と遺伝子のデータを収集。乳がん、子宮頸(けい)がん、前立腺がんの副作用発症にかかわる、57種類の遺伝子配列の違いを特定した。
 新システムでは、微量の血液採取で遺伝子情報を取得。放射線治療で副作用がみられた患者の配列と比較し、発症確率を予測する。約3時間で判定できる。

制汗剤で乳がんリスク増大か? 2006/3/24
 制汗剤に含まれるアルミニウム塩類が、乳がんのリスクを増大させる可能性が指摘された。Journal of Applied Toxicology4月号に掲載されている。
 この論文報告によるとアルミニウム塩類は皮膚を通して体内に入り込み、エストロゲンに似た作用を示すというもの。
 イギリスのリーディング大学生物科学部の論文によると、乳がんの発症と進行にエストロゲンが関与していることがわかっており、エストロゲン様の作用をもつ成分も乳がんリスクに影響する可能性があるという。

イチョウ葉ががん抑制 マウス実験で 2006/03/13
 イチョウ葉に、乳がんを抑制する働きがあることを示す研究結果が、医学誌Anticancer Reserchに掲載された。米ジョージタウン大学の研究では、マウスにヒト脳腫瘍または乳癌組織を移植し、移植前と後にイチョウ葉抽出物を投与したところ、浸潤性癌と関連する末梢型ベンゾジアゼピン受容体の発現に低下がみられたという。
 末梢型ベンゾジアゼピン受容体の発現低下によって、イチョウ葉を投与されたマウスでは、投与されなかったマウスに比べ乳がんの増殖が80%遅くなった。この効果は、投与を続ける限り持続したという。
 早期腫瘍の悪性化や進展を抑制するのにイチョウ葉が有用である可能性を示しているが、人間での効果についてはこれからの研究結果が待たれる。

オメガ3脂肪酸にはがん予防効果なし 2006/02/06
 魚や魚油の補助食品に含まれるオメガ3脂肪酸は、心臓のためには有用であるが、がんの予防には効果がないことが、アメリカのリウマチ専門医らの研究で明らかにされ、米国医師会誌JAMA2006年1月25日号に掲載された。
 大半はオメガ3脂肪酸の摂取量が多くても、乳癌、結腸癌、肺癌および前立腺癌などの発症率に対する影響は示されなかった。
 動物を対象とした一部の研究で、オメガ3脂肪酸の抗癌作用を示す結果が得られているが、その他の研究では関係は示されていない。

遺伝子診断によるがん治療の臨床応用 2006/01/10
 乳がん患者に使う抗がん剤の効果や、白血病の治療薬の副作用を、遺伝子診断で事前に予測できることがわかり、癌研究会有明病院が患者に合ったがん医療を今年から本格的に進める。人間の遺伝子と薬の効果に関する研究は進んできているが、確実なデータは少なく、がんでの遺伝子診断の臨床応用は全国的にもさきがけとなる。
 分析の結果、3種類の遺伝子の働き方を調べれば、治療薬が効くかどうかを判定できることがわかった。判定の確実性が高いため、臨床応用に適しているという。
 これらの成果をもとに有明病院では遺伝子診断を応用したがん治療に取り組むことにしている。

犬の嗅覚でがんを診断 2006/01/10
 普通の飼い犬に、肺がんと乳がんの患者の呼気を健常人の呼気と区別する訓練を行い、肺がんについては感度、特異性とも99%、乳がんは感度88%、特異性98%という区別に成功した。犬の嗅覚は人の10万倍以上といわれており、犬の嗅覚によってがんを診断することが可能となるかもしれない。この研究については、「Integrative Cancer Therapies」の2006年3月号に掲載される予定である。また、英国テレビ局のBBCで、この研究のドキュメンタリーが放送され、米国でも、まもなく放映予定とのことである。

ビタミンDの摂取でがんリスク軽減 2006/01/04
 アメリカのカリフォルニア大学のがん研究グループが2005年12月28日に、ビタミンDを摂取すると、大腸がん、乳がん、卵巣がんにかかるリスクが低くなると発表した。研究グループは、ビタミンDと特定のがんとの関連性について1996年―2004年に世界中で行われた63の研究を精査した。喫煙が肺がんに悪影響を及ぼすという関係が明らかであるのと同じくらい、ビタミンD摂取のメリットは明確であるという。

左利き女性は乳がんになりやすい? 2005/12/19
 左利きの女性は、右利きの女性と比較して、更年期前に乳ガンにかかる確率が2倍という研究結果がブリティッシュメディカルジャーナルに発表された。この研究結果では、子宮内で分泌されているホルモン量の多さにより、左利きになる可能性が高くなるり、乳房の細胞組織にも影響が及び、それががん細胞の発生とつながりを持っているという説が発表されている。
 また、他の研究では、子宮内で男性ホルモンの一種であるテストステロンを多く浴びた乳児は、左利きとして生まれる可能性が高いという報告がされており、このような研究が、乳がん発症の可能性を解明する新たな要因になると考えられている。

乳がん乳房温存手術後、放射線照射で生存率向上 2005/12/19
 乳がんの治療で乳房温存術後に、放射線治療を受けた場合、受けない人に比べ15年後の生存率が向上することが、オックスフォード大学のグループの研究で明らかになっり、イギリス医学誌ランセットに発表された。
 研究グループは、世界約4万人の乳がん患者を調査し、乳房温存手術の後に、切除できなかったがん細胞を死滅させるため、放射線治療を受けた患者の5年後のがん再発率は7%。放射線治療を受けなかった患者の再発率26%に比べ、約4分の1に減少していた。
 さらに15年後の生存率は、放射線治療を受けた人が69・5%で、受けなかった人の生存率64・1%に比べ5・4ポイント向上していることが分かった。

乳がん治療剤で腫瘍縮小確認 2005/12/12
 エーザイは2005年12月12日、同社が開発中の乳がん治療剤「E7389」のアメリカでの臨床試験結果を発表した。既存の抗がん剤で治療効果がみられない患者を対象とした第2相臨床試験で、患者の約15%で腫瘍の大きさが50%以上縮小したことが確認された。新規抗がん剤としての可能性が期待できるとしている。同社は治験を継続し2006年度中にもアメリカでの承認申請を目指し、日本国内でもアメリカでの治験の進捗状況を見ながら治験入りの時期を決める。

ホルモン補充療法で乳がんリスクの低下 2005/12/04
 女性の更年期障害に有効なホルモン補充療法は、海外の研究などで乳がん発症リスクを高めるとされてきたが、日本ではホルモン補充療法を使用した場合は使用しない場合と比べて乳がん発症リスクが3割低い事が厚生労働省の調査で明らかになり、2005年12月9日にアメリカで開催される乳がん学会で発表される。
 厚生労働省は2004年9月から2005年秋までの約1年間における国内の40代〜60代の乳がん患者2500人以上と一般女性2000人以上を対象に、ホルモン補充療法経験の有無を調査した。それによると、ホルモン補充療法の使用期間は半数近くが1年未満、約8割が5年以内で、ほとんどの対象者が卵胞ホルモン(エストロゲン)の1種類しか使用していないことが分かった。この調査結果により日本では使用期間が短く、ホルモンの種類も少ないことが、海外でホルモン補充療法は乳がん発症リスクを高めるとの考えとは逆の結果が出た理由と考えられる。

女性専門の診療所 八尾総合病院が来年開設 2005/11/29
 富山市の八尾総合病院は2006年6月、富山市内に婦人科と乳腺専門科を合わせた富山県内初の女性専門の診療所を開設する。スタッフのほとんどが女性で、思春期から老年期まで女性の身体や精神面の問題に対応する。最新の検査機を配備し乳がん早期発見も可能で、生涯にわたって女性の健康を助けていく。
 検査から日帰りの手術まで可能で、八尾総合病院とはシャトルバスを運行し連携する。乳腺専門科には、しこりになる前の段階で乳がんを発見する機器「マンモグラフィー」や針生検の「マンモトーム」など最新の医療機器も配備し、手術後の抗がん剤治療も行う。

胎盤が重いほど乳癌(がん)リスクが高い 2005/11/16
 妊娠期間に形成される胎盤が重いほど、その女性が閉経時までに乳癌(がん)になるリスクが大きいことが、スウェーデンのグループの研究で明らかになり、アメリカ医師会誌JAMAの2005年11月16日号に掲載された。
 乳がんの原因は明らかになっていないが、発症リスクの増大にホルモンが関係しているのは明らかで、妊娠期間にはホルモン値が急激に増大することが知られている。妊娠期間のホルモンは主に胎盤によって産生され、エストリオールの値は、胎盤の重量とともに増大することが報告されている。このことから、母体の乳癌発症のリスクが胎盤の重量に伴って増大するのではないかと考えられると結論付けている。
 この仮説を検証するため、スウェーデンの女性30万人以上のデータを調査し、その中で乳癌を発症した女性を対象に胎盤の重量を調査したところ、700グラム以上の女性の乳癌発症のリスクは、500グラム未満の女性よりも約4割高く、2回妊娠を経験している女性を調査したところ、2回の出産時の胎盤がいずれも500グラム未満であった女性と比べると、一方の妊娠時に700グラム以上であった女性はリスクが8割以上も高いことがわかった。

定期的なデザートの摂取は乳がんのリスクを高める 2005/11/12
 アイスクリーム、チョコレート、ビスケットなどデザートを定期的に食べると、乳がんのリスクが高まるとのイタリアの研究グループの研究成果が腫瘍学の医学雑誌「アナルズ・オブ・オンコロジー」、イギリス医師会誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に掲載された。研究チームがイタリアの女性五千人以上を対象に、デザートの摂取と乳がんの関係を調査、摂取の最も多いグループは、少ないグループに比べて、乳がんを発症しやすいという結果が得られた。

乳がん医薬品ハーセプチンに警告 英医学誌
2005/11/12
  2005年5月の米国臨床腫瘍学会で将来有望と発表され注目の高まっているロッシュ社の乳がん医薬品ハーセプチンについて、英医学雑誌ランセットは、何人かの患者で深刻な心不全を引き起こすのは明らかで、ハーセプチンの有効性と安全性について、信頼に足る判断をするための利用可能な証拠が不十分ということだと警告している。
 また、乳がんの治療(治癒)を暗示するようなデータ公表は、誤認を招くばかりか、誇張でさえあると懸念を示している。

抗がん剤治療での延命効果確認を義務付け 厚生労働省
2005/11/02
 抗がん剤の有効性や安全性を高めるため厚生労働省は2005年11月2日までに、新薬の申請、承認に臨床試験(治験)での延命効果確認を義務付ける治験評価法の改訂指針をまとめた。
 2006年4月から、患者が多い非小細胞肺がんや胃がん、大腸がん、乳がんなどを対象に運用する。
 これまでは、有用な抗がん剤を早く使えるようにするため、体への安全性を調べる第一相試験と、腫瘍縮小効果を見る第二相試験のデータに問題がなければ、承認を得られた。
 延命効果を確かめる最後の第三相は、実施されることが少なく腫瘍縮小効果はあっても副作用が強く延命につながらない場合もみられることなどから見直すことになった。
 改訂指針では、原則として承認申請時に、第三相の結果のデータ提出を義務付けている。

乳がん手術後に痛み、患者の2割 2005/10/23
 乳がん手術を受けた患者の約22%に、胸やわきの下、上腕が慢性的に痛む「乳房切除後疼痛(とうつう)症候群」(PMPS)が起きている。
 原因は転移を防ぐためわきの下のリンパ節も切除する際に、神経を傷つけるためといわれる。
 PMPSではないが、つっぱりや圧迫などの不快感がある人も含めると約70%に上り、このうち24%「日常生活への影響がある」と回答。

遺伝子の配列によって乳がん・大腸がん・肝臓がんリスクに差 2005/9/12
 がん細胞の増殖を加速する遺伝子「SMYD3」の働きの活発化が、乳がんや大腸がん、肝臓がんの細胞が増殖する原因になることを以前解明した東京大学医科学研究所の中村祐輔教授らが、「SMYD3」の塩基配列の特定配列を持つ人は乳がんにかかるリスクが約4.5倍になることを、2005年10月12日米科学誌ネイチャージェネティクス電子版で発表した。
 今回、「SMYD3」の働きを調節している領域の塩基配列に、同じ配列が2回繰り返すタイプと3回繰り返すタイプがあることを発見し、患者を調べたところ、乳がん、大腸がん、肝臓がんでは同じ配列が3回繰り返すタイプの人が圧倒的に多いことが判明。

アスピリン・イブプロフェンの乳がんへの影響とは? 2005/5/31
 乳がんの予防には鎮痛薬のアスピリンと非ステロイド性抗炎症薬のイブプロフェンが効果があるとされてきたが、乳がんにはサブタイプが複数あり、一部のサブタイプの乳がんについてはアスピリンやイブプロフェンを長期間毎日服用する事によって、リスクが高まってしまうと、米医学誌「Journal of the National Cancer Institute」2005年6月1日号に掲載された。カリフォルニア大学のSarah F. Marshall博士らが調査したもので、5年以上毎日アスピリンを服用した場合、ER/PR陰性例ではリスクが80%も増加する事がわかった。また、イブプロフェンを5年以上毎日服用した場合も50%以上の乳がんリスクの増加がみられた。
 過去の研究では、乳がんのサブタイプ別には詳細な研究は報告されておらず、更なる研究が必要だ。
 アスピリンやイブプロフェンを長期間定期的に服用する場合は、医師や専門家に相談する事が大切。